(Y.U)
富士山がある山梨県には、毎年多くの観光客が訪れます。日本国内屈指のインバウンド受け入れ率も誇りますが、その多くは東京からの日帰りツアーのお客さまなんですね。山梨県内には空港も港もありませんから、アンケートを取ってみると「富士山は東京にあると思っていた」なんて声が寄せられることもあるくらい。滞在時間が少ないので県内での消費額も圧倒的に少ないのが課題です。山間地にあって空港や港ができる可能性は極めて低いとなれば、港のある静岡県や空港のある東京都から人を呼び込み、滞在時間を長く、消費額を多くする必要がある。これが今回の飛鳥プロジェクト参画の背景にある当行の課題です。
「飛鳥」とは日本を代表する豪華客船の名称で、現在は「飛鳥II」と「飛鳥III」が運行しており、1泊2日の短期クルーズから100日以上かけて世界を巡る長期クルーズまで、日本発着の多彩で優雅な船旅を提供しています。最高品質のエンターテイメントや食事が提供され、スパやプール、ショップ、スポーツ施設などが入る客船ですから、当然、造船には多額の資金を要します。本プロジェクトの舞台となる「飛鳥III」も、2019年頃から、アンカー・シップ・パートナーズ株式会社がさまざまな銀行に資金対応を打診していました。
しかし2019年といえば、世界では新型コロナウイルス感染症の感染者が出はじめ、日本でも「横浜港に停泊している船で発症者が出た」というニュースが連日メディアを賑わせていましたよね。渋い反応をする銀行も多かったようですが、当行の担当者は「疫病はいずれ収束するし、海のない山梨県だからこそ、この決断が新しいお客さまを呼び込むきっかけになるはず」と上層部を熱く説得し、かなり初期段階で資金対応を決めています。山梨中央銀行って、当時の地方銀行の中ではとても保守的で慎重な銀行という評判があったんですね。「あの山梨中央銀行が融資を決めた」と業界的にもかなりインパクトがあり、出資を集める呼水になったと聞いています。

